「外国人技能実習生」について、「低賃金で3年間は辞めない労働力」という間違った風の噂や悪徳監理団体の売り込みを信じて、外国人技能実習生の受入れを考えている企業の方々に対して、思いつくまま3つほど、技能実習生の受入れのデメリットを挙げてみたいと思います。

これから挙げるデメリットを検討して頂き、なお外国人技能実習生の受入れを決断された企業の方々は、マスコミで報道されている技能実習生の失踪などに悩まされず、きっと外国人技能実習生の受入れに成功するでしょう。

なお、メリットについては別の記事でこのブログ内に掲載していますので、参照して下さい。

では、以下3つほど外国人技能実習生の受入れのデメリットを挙げたいと思います。

①日本人を雇うよりも割高である

まず、1つめのデメリットですが、外国人技能実習生を雇用することは、日本人を雇用するよりも割高になるということです。

以下、簡単に理由をご説明します。

まず、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下、技能実習法という)において日本人と同等以上の給与の支払いを行うように明記されています。

技能実習法第9条9号

技能実習生に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることその他技能実習生の待遇が主務省令で定める基準に適合していること。

つまり、外国人技能実習生であっても、最低でも、日本人と同等の給与等が必要です。

さらに、日本人と同等以上の給与に加えて監理団体や送出し機関に対して「監理費」の支払いがあります。

この監理団体や送出し機関に支払う「監理費」が、外国人技能実習生の受入れを日本人の雇用よりも割高にしている原因ともいえます。

ただし、この「監理費」は意味もなく搾取されているわけではありません。

監理団体の多くは事業協同組合であり、利益の追求は禁止されており、ちゃんと対価に見合った「サービス」または「労力」の「代償」として監理費の金額を設定しています。

例えば、「サービス」の一例としては、「技能実習計画作成のサポート」、「技能実習生に対する母国語の相談サポート」などが挙げられます。

また、「労力」の一例としては、1号技能実習であれば、毎月の企業訪問によるコンプライアンスチェックおよびコンプライアンスチェックに基づく書類作りなどが挙げられます。

この監理費も監理団体によって、金額が異なりますので、監理費の内容について、ご不明な点があれば、各監理団体にお問合せください。

外国人技能実習生は低賃金でコストが抑えられる」という甘い誘い文句で近づいてくる監理団体もあるかもしれませんが、現実は、日本人よりもコストが高いということを肝に銘じて頂きたいです。

②技能実習生の日本語能力が低い

2つめのデメリットは技能実習生の日本語能力が低いことにより、コミュニケーションが上手く取れないということが挙げられます。

技能実習生の多くは、早くても入国の6ヶ月前に、初めて日本語の勉強を始めます。

私たちの多くが、6ヶ月で外国語を自由に話せないのと同じように、技能実習生も6ヶ月で日本語を自由に話すことはできません。

ゆっくり、はっきりと話された日本語を、何とか聞き取り、片言の日本語で答えるのが精一杯です。

感じとしては、小学校低学年の子どもと話しているのと同じような感じです。

でも、このコミュニケーションが取りにくいということは、本当にデメリットでしょうか?

確かに、日本語の理解力が低い相手には、こちらの伝えたいことが、なかなか伝えることができませんし、正直、イライラすると思います。

しかし、日本語の理解力が低い相手に伝えるために、工夫して、分かりやすく伝えた言葉は、例えば、入社したばかりで、右も左も分からない新入社員の日本人にとっても、きっと役立つはずです。

皆様のなかにも、新入社員の頃に仕事の内容や進め方が分からずに苦労をされた方がいらっしゃると思います。

ぜひ、技能実習生の日本語の理解力が低いことに対して、イライラするのではなく、珠玉のマニュアル作りに役立っているんだという気持ちで、接して頂ければと思います。

③法令遵守が厳しくなる

外国人技能実習生を受入れると、監理団体の監理責任者の下で、3か月に1回以上の頻度で、監査が入ります。

監査項目は主に以下の5つになります。

①技能実習の実施状況の実地確認
②技能実習責任者及び技能実習指導員からの報告
③技能実習生の4分の1以上との面談
④実習実施者の事業所の設備、帳簿書類等の閲覧
⑤技能実習生の宿泊施設等の生活環境の確認

具体的には、以下のような不正がないかどうかの確認がされます。

①割増賃金の不払はないか?
②労働時間の偽装はないか?
③技能実習計画とは異なる作業への従事はないか?
④実習実施者以外の事業者での作業従事はないか?
⑤不法就労者の雇用はないか?
⑥入国後講習期間中の業務への従事はないか?
⑦認定計画と異なる作業に従事していないか?
⑧雇用契約に基づき適切に報酬が支払われているか?
⑨旅券・在留カードの保管を行っていないか?
⑩技能実習計画に記載された機械、器具等の設備を用いて、安全衛生面に配慮して、技能実習計画に記載されたとおりに技能実習が行われているか?
⑪賃金台帳、タイムカードなどから確認できる技能実習生に対して支払われた報酬や労働時間が技能実習計画に記載された内容と合致しているか?
⑫技能実習生に対する業務内容・指導内容を記録した日誌から、技能実習生が技能実習計画に記載された業務を行っているか?
⑬宿泊施設の衛生状況が良好であるか?
⑭宿泊施設の1部屋当たりの実習生数が何名となっているか?
⑮不当に私生活の自由が制限されていないか?

以上、15個の項目を中心に、受入れ企業が法令遵守できているかどうかの監査を監理団体からうけることになります。

また、外国人技能実習機構が、技能実習生の受入れ企業(約48,000社)を3年間で全数網羅できるペースで実地検査の実施をします。

お金を払っている監理団体に監査を甘くしてもらおうと考えても、結局、技能実習計画認定機関である外国人技能実習機構が実地調査をしますので、法令遵守は必須となります。

(もっとも、監理団体には毎年、外国人技能実習機構の実地調査が入りますので、監理団体の許可取消しを恐れる監理団体は、いくらお金を頂いている受入れ企業にお願いされても、監査をしっかりやると思います。)

このように、外国人技能実習生の受入れをするには、監理団体の監査や外国人技能実習機構の実地調査が入り、法令遵守が厳しくなります。

つまり、法令遵守のできないブラック企業は、外国人技能実習生の受入れができません

裏を返すと、外国人技能実習生の受入れをしている企業は、法令遵守をしっかりとやっているホワイト企業だということです。

ぜひ、外国人技能実習生の受入れをしている企業は、法令遵守を嫌がらずに、進んで法令遵守をして頂いて、自分たちの企業は、ホワイト企業だというアピールをして頂ければと思います。

まとめ

以上、思いつくままに外国人技能実習生の受入れによるデメリットを挙げてみました。

貴社が事業維持、または、事業拡大をするためには、労働者が必要なのに、なかなか日本人の労働者が集まらず、困っている中で、仕方なく外国人技能実習生の受入れで、労働者の確保を検討している企業もあるでしょう。

しかし、そもそも貴社に労働者が集まらないのか?

その根本原因から目を逸らして、外国人技能実習生の受入れでやり過ごしたとしても、きっと「労働者の不足」という問題から逃れることはできないでしょう。

ぜひ、外国人技能実習生の受入れを通じて、貴社の魅力を高め、技能実習生だけではなく、日本人の労働者も生き生きと働ける職場づくりをして頂ければと思います。

忘れないでください。

貴社は、お客様にとって、魅力的な商品・サービスを提供できているからこそ、多くの労働者が必要なのです。

すでに対外的な社会であるお客様にとって、魅力的な貴社が、技能実習生の受入れを通じて、対内的な社会である労働者にとって、魅力的な企業となり、ますます発展することを願っています。

今日のブログは以上です。
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